生まれたときから、俺の居場所はなかったようなものだったー。

はるか昔、神にさからって堕天使となった大天使、ルチフェル。

俺はその血を引いている。

どこへ行っても中途半端だと蔑まれ、天使にも悪魔にも受け入れられない存在ー。

それが俺達、堕天使なのだ。

だが君に出会って、俺は居場所を見つけたような気がしたんだーーー。





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devigel
プロローグ


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「あ〜あ、ったく・・・かったりーなオイ!」

友達のアデルがつぶやく。

「しょーがねーだろ!仕事なんだから。」

そういって慰める俺・・・。

実際のところ俺だって仕事なんかやりたくねーんだよって話だけど。

 

 

 

俺たち堕天使の仕事・・・。それは【人間界の監査・統制】である。

天使や悪魔が人間界で悪さをしていないかを調べたり、

仕事以外での長期滞在している者を連れ帰ったりする仕事。

それが俺たちの仕事だ。

 

 

 

 

 

はるか昔、ルチファルの血をひく堕天使は、普通の天使や悪魔とは比べものにならないほど強大な力を持っていた。

その力が天界に及ぶことを恐れた大天使ミカエルは、堕天使の魔力を抑制するための装置を作り、

天界の最高峰ともいわれる、天廟に置いた。

その装置の力は天界だけでなく、魔界にも及び、そのせいで、俺たちは魔界での仕事ができない。

魔力が全く使えないからだ。

 

 

そんなわけで今日も俺たちは指定された地域の監査をしていた。

アデルがめんどくさがるように、人間界ではほとんど問題は起こらない。

たまにいるのは、身内の魂を回収に来た死神と、もめている天使や悪魔がいることー。

魔力を使いすぎて、帰れなくなった天使や悪魔がいたり、そのまま人間として暮らしている

奴らを見かけたこともある。

だがそうした問題はたいしたことではなくて、大変なのは、天使と悪魔がもめていることだ。

止めに入ってもたいてい無視される・・・。

たしかに俺たちはどっちの味方でもないが・・・。

だが、人間界で起こった問題の責任は、全て堕天使にあるので、なるべく問題は起こさないでほしい。。

 

 

まあ今日もいつも通り何もなく終わるだろうと思っていた・・・。

 

 

「ねえねえ、お前らさあ」

 

後ろで声がしたので、はっとしてふりむくと、数人の悪魔がいた。

「なんか用??」

アデルがダルそうに尋ねる。

「お前らってアレだろ?魔力たくさん持ってるんだよなぁ?」

「だから何だよ?」

ただでさえイライラしているアデルは、今にも怒りそうだ。

「ちょっと分けてくんないかなーって思ってさ。。俺たちこれから天使とケンカしに行くんだよね」

奴らはそう言って笑いながらこっちを見た。

「てめっ、ふざけてんじゃねぇぞ!天使とのもめごとはタブーだって言われてんだろ!!??

それに誰が責任とんのか知ってんのか!!寝言は寝てから言えっつの!!!」

アデルは怒って相手の襟をつかんだ。まずい展開だ・・。

「おいアデル・・やめろって。こっちがケンカふっかけてどうする!!??」

だがアデルはその手を離そうとしない。

「おめーら俺たちが堕天使だからってなめてんじゃねーぞコラ!!俺たちはなぁ、

お前らより何百倍も魔力があんだよ。だから俺が本気になればお前らなんか

3秒でふっ飛ばせんだよ!!」

 

確かに俺たちは人間界では力の抑制をあまり受けないので、持っている魔力の70%くらいは

出すことができる。しかしその強大なパワーを使うことは、人間にも影響が出かねないため、

魔力の使いすぎはタブーとされている・・・。

 

 

「やれるもんならやってみろよ。」

 

相手の悪魔が言った。

 

「っっっ!!!この野郎!!」

 

「アデルッ!!!!」







気がつくと、体が動かなくなっていた・・・・。

隣を見ると、アデルも固まっている。

 

これは時の魔法だ・・・。天使や悪魔でも、レベルがかなり上の者でなければ習得が

難しいという・・・・。どうしてこいつらがそんな上級魔法を使えるんだ!?

 

「驚いたか!!これは、闇界のダチから教えてもらったんだ。」

 

闇界・・・・。天界と魔界との間にあり、魔法開発のため、危険な実験をしているとかで

天使にも悪魔にも恐れられている場所・・・。

 

こいつ・・・まだ下級レベルのくせに、こんな高度な魔法を覚えたのか?

魔法のレベルに合わないものが、それを使ったとき、身体が力についてこれず、

消滅するという話はよく聞くが、こいつの場合もおそらく危ない。

被害が出る前に食い止めなければ!!!

 

 

 

「おい、アデル・・・。こいつ・・・」

「ああ、わかってる。」

 

 

「せーのっ!!」

二人でタイミングよく魔力を放った。

もちろん、相手に軽くダメージを与えるくらいに魔力を抑えて。

 

 

「うわっっっ!!!・・・くそっ、お前ら。。。なんで動ける???」

時の魔法を使った悪魔が驚いた様子で尋ねた。

 

「お前人の話聞いてなかったのか??俺たちはお前らの何百倍の魔力があんの。

だからこの魔法を破ることなんて楽勝なんだっつの。」

アデルが得意げに答えた。だが目は完全に怒っている。

 

「くそっ・・もう一回・・・。

・・・・あれ、体が・・・

・・・・力があふれてくる・・・・・。

・・・はぁっ、はあはあっ。ううっ・・・」

その悪魔の様子がおかしくなった。くるしそうにもがき出し、その場に倒れこんだ。

 

「まずい!力が暴発し始めてる!!オイ、お前ら早くそいつを魔界へ連れて行け!!」

アデルは周りにいた仲間の悪魔たちに指示をした。急がなければ人間界に被害が及ぶ。

 

 

そのときだった。

 

 

 

「ああああああーーーーーーー!!!!!!」

その悪魔は突然立ち上がり、無差別に攻撃し始めた。

あちらこちらで爆発が起きる。

いつの間にか周りにいた悪魔たちの姿が消えていた。

もはや俺たちでこいつを何とかしなければ!!

 

 

「俺はあいつを何とかするから、お前は人間を守れ!!」

「わかった!!気をつけろよ!!」

アデルの返事はなく、暴走している悪魔をとらえ、魔法で動きを封じ始めた。

俺も人間を守るため、周囲一体ににバリアをはる。

 

「うあああっ!!」

 

アデルの悲鳴が聞こえた。肩をかすめたらしく、血が出ている。

「アデル!!!大丈夫か!!!」

あわてて駆け寄り、傷の手当てをする。

「わりィ・・・・。」

「気にすんな!!それよりも早くあいつを!!」そういって振り返った瞬間・・・・

 

 

 

 

すさまじい爆風と衝撃が俺たちを襲った。

 

 

俺たちは、その悪魔が消滅する瞬間を・・・見たのだった。

 

 

 

気がつくと、俺は地面に倒れていた。体は傷だらけで、もしかしたら骨が折れているかも

しれなかった。きっと普通の天使や悪魔なら、一緒に消滅してしまっただろうな・・・。

そんなことを思いながら、はっと気づくとアデルが俺の少し前方に倒れていた。

 

「アデル!!!!」

這うようにしてアデルに近づいた。

かろうじて息はしているが、肩の傷もまだ癒えておらず、かなり危険な状態であることが

わかった。どうにかしてアデルを魔界へ連れていかないと!!

 

ピューーーッと指で笛をふくと、俺のこうもりが飛んできた。

 

「今からアデルを魔界へ送るから、魔界にいる俺の友達にこの事を知らせて、

アデルを助けてもらうんだ。いいな!!」

 

「この者を魔界へと運びたまえ。送還!!!」

 

目の前にいたアデルか消え、こうもりが魔界へと飛び去ったのを確認して、俺はゆっくりと

倒れたーーー。

 

ほとんど魔力を使い切ってしまった俺には、もう魔界へと帰る力は残されていなかったんだ。

俺はここで死ぬんだと、そう思った・・・。