バサッ。 大学の資料を机に置き、俺はリビングのソファーに座った。 無造作にちらばる資料を見つめて、一ヶ月前を思い出した。 ・ ・ ・ 夏休みに入る前、担任との進路相談で俺は自分の行きたい大学と、その理由を話した。 担任の福ちゃんはとてもいい先生で、俺の話をしっかり聞いてくれたし、頑張れと応援してくれた。 しかし、やっぱり併願で他の大学も受けるべきだと言った。 俺の成績では、厳しいと言うのだ。 それからいくつかの大学を紹介されて、二学期に入ったらすぐ教えて欲しいと言われた。 だけど俺は、志望校以外の大学なんて考えたくなかったし、どうでもいいやと思っていたら、 いつの間にか二学期だった。 ・ ・ ・ 「併願・・かぁ」 正直資料なんか見たくなかったけど、福ちゃんがせっかく用意してくれたから、目だけは 通そうと思い、順に資料をめくり始めた。 「比・・呂??」 「あ、ユイ・・ごめん。俺この資料片付けなきゃいけないんだ。 寒かったら俺の部屋行ってていいから。」 階段を下りてきたユイに声をかける。 「何??それ・・。」 不思議そうに資料をのぞき込むユイは、俺のパーカーを着ていた。 だぼだぼしているのがちょっと可愛い。 「これ??大学の資料だよ。・・って大学ってわかる??」 「学校のこと??」 「そうそう、学校だよ。なんでわかんの??」 「王宮の近くにもこんな学校があるの。」 「そーなんだ。」 へぇ〜、空の上にも学校とかあるんだ。。とか考えながら、再び資料に目を通す。 でもやっぱり何の魅力も感じない大学ばかりで、だんだん嫌気がさしてきた。 「ったくめんどくせー」 資料を机に戻すと、ユイが驚いた様子でたずねた。 「比呂、学校行きたくないの??」 「いや、行きたいけど、この大学には行きたくないんだよ。」 「どうして??」 「どうしてって・・・自分に合ってないから・・。」 「合わないってどうしてわかるの??」 「自分のやりたいことがやりたいんだよ。俺は。この大学は俺のやりたいことが やれないんだ。」 「ちゃんと見てもいないのに、なんでそんなこと分かるの?? しっかり見れば、見つかるかもしれないじゃない!!」 ユイはなんだか怒っているみたいだった。 「ちょっ・・なんでお前怒ってんの??てかお前にカンケーないし!!」 なんだかイライラして、つい強い口調でユイに当たってしまった。 「・・比呂・・嫌い。」 ユイはバッとその場を離れ、階段を駆け上がった。 なんでユイはあんなに怒ったんだろう。 俺がしっかり資料を見なかったことに対して怒ってたよな・・。 大学のことなんて、ユイには分からないはずなのに・・・。 俺の疑問は、ずいぶん後になってから解決することになる。 ずいぶん後に・・・・・。