突如現れ、空から来たと言う一人の少女ー。
俺は何が何だかわからなくなってしまった。
「は?何言ってんの???」
思わずきつい口調になってしまう。
「意味わかんないんだけど。君、今、空から来たって言った??」
こくりとうなずく少女。
どうやら本気で言ってるらしい。何考えてるんだ!?
「ねぇ、俺にもわかるように説明してくんない??
空から来たってどういうこと??君人間じゃないの??」
すると少女は右手を空にかざし、指をパチンと鳴らした。
急にあたりが静かになる。人通りのある交差点から聞こえていた
ざわめきがなくなった。道路を走る車の音もしない。
俺はあわてて路地を出て、あたりを見渡した。
人や車、今まで動いていたものの動きが全く止まっている。
「何だよコレ・・・」
「時をとめたの。声がしないほうが話しやすいと思って。」
少女がつぶやく。
「ってか、手品にしちゃあすごすぎなんだけど・・。」
「手品じゃないわ。これは時の魔法よ。」
ま・ほ・う・・・・・・???この子魔法って言ったか??
魔法なんて言葉、使うのは小学生以来だし、聞いたのも久しぶりなんですけど。
俺は頭が真っ白になると同時に、もう、何もかもどうでもよくなった。
この子が空から来たのも、魔法を使うのも、この出来事が夢だとしても、
いちいち考えてたらきりがねえよ。
とにかくこの子の言う事が事実だと思って話を聞こう・・・。
「とにかく、なんで空にいる人がここにいんのか教えてよ。」
少女はゆっくりと話し出した。
「私はパラシャイング王宮第40代目、テルビア=ラファナ王の
娘、ユイです。今日は許婚との結婚式だったんだけど、
結婚が嫌で、王宮から逃げてきたの。そしたらいつの間にか
下界に来てしまっていて、気づいたらここにいたの。」
気づいたらって・・・俺が起こしてやったんだろ??
少しあきれながら話を聞いていると、ポツポツと雨が降り出した。
「やっべー、傘持ってきてねぇよー!!」
どうやら天気雨のようだ。
ひとまず濡れないようにどこか建物へ入ろう。
この子もこんな薄着じゃ風邪ひいちゃうし。
「ひとまず話はここまでにしよーぜ!」
きょとんとしている少女の腕を取り、自転車を引きながら
俺は走った。
そして、薄暗い路地を出て気づいたんだ。
今まで話していたこの少女、見たこともないくらい、
綺麗だということにー。