ー天界ー

 

ここはユイの暮らす天界、パラシャイング王宮ー。

 

いなくなったユイを探して宮兵たちがばたばたと走り回っている。

広間の長椅子には二人の男が座っていた。

ユイの父親、テルビア王と婚約者のクルト王子である。

 

「王・・・。」

大臣のジョバンニがやってきた。

「ユイは見つかったか!?」

「いえ・・・それが国中どこにもユイ様はいらっしゃらないと

の報告を受けました。おそらく下界へ降りられたのではないかと・・。」

「何だと!!下界へ・・・・!?これは大変なことになった。

ジョバンニ、すぐに下界へ兵を送る手配を!!」

「はっ!!」

 

 

黙ってやりとりを聞いていたクルト王子が口を開いた。

「王・・・。」

 

「クルト君、本当にすまない。まさか下界へ降りているとは・・・」

 

「これは僕の責任です。突然結婚式をあげると言われれば、

誰だって驚くでしょう。ユイを驚かせようとしたこととはいえ、

僕のせいでユイは下界へ行ってしまった。

下界は天界と違って危ない所だと聞いています。

すぐにユイを見つけなければいけません。

僕は下界にユイを探しに行きます。」

 

「それは駄目だ!君も知っていると思うが、

魔力の強いものが下界へ行けば、

その力は徐々に減っていき、いずれ二度と天界へ

戻れなくなってしまう。現に君の父親が・・・。」

 

「そうでしたね・・・。それは承知しています。

でも僕は必ずユイを連れて戻ってきます。信じてください。」

 

「クルト君・・・。娘のために本当にすまない・・・。

どうか無理だけはしないと約束してくれ。」

 

「約束します。」

 

 

こうしてクルト王子は下界に降りることが決定した。

 

 

 

しかし彼がユイと出会えるまでには、もうしばらくかかることになる。 

 

そして同時に、巨大な力がバラシャイング王宮に向かって動き出していた・・・・。